周産期の片頭痛が子癇前症と関係しているという報告があります。また、片頭痛があると脳卒中と急性心筋梗塞のリスクが上昇することも示唆されています。
今回、周産期の片頭痛の有病率を調べ、片頭痛と関連する疾患や合併症について分析する集団ベースのケースコントロール研究を行われました。その結果、片頭痛のある妊婦が脳卒中を併発する可能性は、片頭痛のない妊婦に比べ15.8倍、特に虚血性脳卒中は30.7倍にもなることが報告されました(BMJ誌電子版2009年3月10日)。
妊娠可能な年齢の女性の10人に1~3人に片頭痛が見られます。今回は妊婦に限った片頭痛有病率を調べた研究です。脳卒中と片頭痛の関連が認められた結果になりましたが、いずれも血管の慢性炎症疾患という点では一致しています。妊婦だとさらにリスクが上がる理由には言及されていません。
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→米国Wake Forest大学のCheryl D Bushnell氏らは、全米の入院患者を登録した大規模データベースから妊婦を選び、片頭痛の有病率と併発疾患について調べられた。
米厚生省傘下のAgency for Healthcare Research and QualityのHealthcare Cost and Utilization Projectのデータベース(全米の約1000病院の入院患者500万~800万人の情報を登録している)の2000~03年のデータの中から、周産期に入院していた1834万5538人の妊婦に関する情報を得た。
それらの中から、ICD-9コードに基づいて片頭痛と診断されていた患者を選出。緊張性頭痛の患者は除いた。片頭痛患者に、脳卒中(くも膜下出血、脳内出血、虚血性イベント、脳静脈血栓症、妊娠関連脳血管イベント)、その他の血管疾患(心筋梗塞、心疾患、肺塞栓、深部静脈血栓症、血栓形成傾向)や、高血圧、糖尿病、妊娠高血圧と子癇前症、妊娠性糖尿病、心筋症、肺高血圧、貧血、肺炎、産後感染、産後出血、子宮内胎児死亡などの診断があったかどうか調べた。
主要アウトカム評価指標は、片頭痛の診断と、脳卒中その他の血管疾患の診断に設定。
入院中の片頭痛診断は3万3956件(入院10万件当たり185件)あった。
経膣分娩のための入院に比べ、帝王切開のための入院、流産または中絶のための入院、流産または中絶以外の理由による分娩前の入院、出産後の入院は、すべて片頭痛の診断を受ける頻度が高かった(p<0.001)。なかでも、中絶または流産以外の理由による分娩前の入院における片頭痛診断は、10万件当たり1049件で、経膣分娩のための入院と比較したオッズ比は9.0(95%信頼区間8.2-9.9)と高かった。
片頭痛と診断されるリスクは、年齢上昇とともに上昇していた。20歳未満の妊婦に比べ、40歳以上の妊婦のオッズ比は2.4(2.0-2.9)だった。
人種別に比較すると、アフリカ系、ヒスパニック系やその他の人種に比べ、白人において片頭痛リスクが有意に高かった。
片頭痛の診断と他の病気の診断との間に有意な関係が認められたのは、すべての脳卒中(オッズ比15.8、11.1-22.5)、心筋梗塞(4.9、1.7-14.2)、心疾患(2.1、1.8-2.6)、肺塞栓(3.1、1.7-5.6)、静脈血栓塞栓症(2.4、1.3-4.2)、血栓形成傾向(3.6、2.1-6.1)、あらゆる高血圧(3.6、3.1-4.2)、喫煙(2.7、2.4-3.1)、糖尿病(2.3、1.9-2.7)だった。
脳卒中の中では虚血性脳卒中との関係が最も強力だった(オッズ比30.7、17.4-34.1)。一方で、脳静脈血栓症、くも膜下出血との間には有意な関係は認められなかった。
また、片頭痛と非血管疾患(肺炎、輸血、分娩後の感染または出血)の間には有意な関係は見られなかった。妊娠関連合併症の中でも、妊娠性糖尿病(1.0、0.9-1.1)は有意な関係を示さなかった。
多変量ロジスティック回帰分析を行い、片頭痛と他の疾患との関係を調べた。その結果、年齢(オッズ比1.03、1.02-1.03)、子癇前症(2.29、2.13-2.46)、脳卒中(15.05、8.26-27.4)、静脈血栓塞栓症/肺塞栓(3.23、2.06-7.07)、心疾患/心筋梗塞(2.11、1.76-2.54)、喫煙(2.85、2.53-3.21)、糖尿病(1.96、1.64-2.35)がそれぞれ独立して片頭痛と関係していることが明らかになった。
入院した妊婦の集団においては、周産期の片頭痛と血管疾患の診断が併存し、それらの間には強力な関係が見られた。