片(偏)頭痛患者さんでは動脈硬化が進展しやすいことが今までの研究で示唆されていましたが、むしろ静脈血栓塞栓症を発症しやすいことが報告されました(Neurology(2008; 71: 937-943)。
この報告は、55歳以上のイタリア人574例に片(偏)頭痛の既往の有無について聞き取り調査を行ったほか、超音波検査と治療記録から頸部および大腿部の動脈におけるアテローム動脈硬化症、さらに静脈血栓塞栓症の既往の有無を調べたものです。
その結果、アテローム動脈硬化症は片(偏)頭痛の有無で有病率や重症度に大差は認められなかった一方で、片(偏)頭痛患者さんではそうでない人に比べ、静脈血栓塞栓症の発症リスクが高かった(18.9%対7.6%、年齢と性で調整、P=0.031)ということです。
経口避妊薬の常用でも静脈血栓塞栓症が起こりやすいことが報告されていますが、片(偏)頭痛でも起こりやすいという結果は今回が初めての報告です。
片(偏)頭痛は命にすぐ関わらない機能性の疾患とされています。しかし、血管に慢性炎症が起こっている病態ですので、こういった重篤な合併症が起こる可能性はあります。
頭痛だからといって鎮痛剤を内服するだけでなく、その根本病態である慢性炎症を治療していかないと片(偏)頭痛の根本治療とはいえません。