うつ病は糖尿病、心血管疾患をはじめとする慢性病との関連が指摘されていています。うつ症状を呈する高齢者では5年間に体脂肪ではなく内臓脂肪が蓄積する可能性が高いと報告しています(Archives of General Psychiatry, 2008; 65: 1386-1393)。
うつ症状は、腹部肥満、特に内臓脂肪の増加を引き起こすが、その度合いは全身肥満よりも強く、全身肥満とは無関係であることが示唆されました。
うつ病では、慢性ストレスにより脳の特定領域が活性化され、コルチゾルが上昇しています。コルチゾルは腹部脂肪の蓄積を促進することからうつ症状が内臓脂肪の増加と関連していることが考えられます。
またうつに陥ると運動をしない、食習慣が乱れるなどのライフスタイルが定着することも一因となっているでしょう。内臓脂肪の増加が慢性炎症疾患を起こしますので、うつ病は様々な慢性病と関わることは不思議ではありません。
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→今回の研究では70?79歳の2,088例を対象とし、試験開始時にうつ病のスクリーニング検査を行ったほか、開始時と5年後に全身肥満と腹部肥満の度 合いが記録された。全身肥満の測定にはBMIと体脂肪率が使用された。一方、腹部肥満は、ウエスト周囲径、矢状径(背中と腹部の最も高いポイントの距離) とCTによる内臓脂肪(内臓周囲の脂肪)から判断された。 開始時点で参加者の4%にうつ症状が認められた。体重変化に関連した社会人口学的特徴などによる調整を行ったところ、うつ病と5年間の矢状径や内臓脂肪の増加との間に関連性が認められた。