うつ病は慢性炎症の代表的疾患である糖尿病の発現、心血管疾患、心血管死亡との関連が指摘されています。
自由大学医療センター(オランダ・アムステルダム)精神科のNicole Vogelzangs氏らは、うつ症状を呈する高齢者では5年間に体脂肪ではなく内臓脂肪が蓄積する可能性が高いと報告しています(Archives of General Psychiatry(2008; 65: 1386-1393)。
今回の研究では70?79歳の2,088例を対象とし、試験開始時にうつ病のスクリーニング検査を行ったほか、開始時と5年後に全身肥満と腹部肥満の度 合いが記録されました。全身肥満の測定にはBMIと体脂肪率が使用されました。一方、腹部肥満は、ウエスト周囲径、矢状径(背中と腹部の最も高いポイントの距離) とCTによる内臓脂肪(内臓周囲の脂肪)から判断された。
開始時点で参加者の4%にうつ症状が認められました。体重変化に関連した社会人口学的特徴などによる調整を行ったところ、うつ病と5年間の矢状径や内臓脂肪の増加との間に関連性が認められた。
慢性ストレスとうつ病では脳の視床下部―下垂体系が活性化され、コルチゾルが上昇させます。コルチゾルは腹部脂肪の蓄積を促進します。また、うつ病患者は栄養バランスの欠けた食生活などの不健康な生活習慣から腹部肥満の増加に至ることも原因の一部でしょう。
内臓脂肪の増加は慢性炎症を引き起こすために、うつ病に糖尿病の発現、心血管疾患が起こると推測されます。