セロトニンは、うつ病と慢性不安の発症と治療に重要な役割を果たしていると考えられている脳の神経伝達物質の一つです。うつ病や慢性不安が発症する理由は現代医学でもいまだに明らかになっていませんが、男性よりも女性に多く見られます。
カロリンスカ研究所(ストックホルム)のAnna-Lena Nordstr?m准教授らは、脳のセロトニン系に性差が存在することが明らかになったとNeuroImage(2008; 39: 1408-1419)に発表しました。
陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを使用して、男性と女性では、脳の特定領域におけるセロトニンの結合部位の数が異なっていることを突き止められました。
女性では最も一般的なセロトニン受容体の数が男性よりも多く、セロトニンを分泌する神経細胞にセロトニンを再運搬する蛋白質の濃度が男性よりも低いことがわかった。現在の抗うつ薬の主流である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、この蛋白質を阻害する作用を持っているものです。
したがって、抗うつ薬SSRIの効果も男女間で違ってくるのは当然の結果といえます。
さらに今回の研究から、健康な女性のセロトニン系は、月経前に深刻な精神症状を呈する(月経前症候群:PMS)女性のセロトニン系と異なっていることがわかりました。この結果から、女性の間でも抗うつ薬SSRIの効果が違ってくることが容易に想像されます。
このようにセロトニンという一つのタンパク質をとっても、男女差、個人差があり、うつ、自律神経失調症、更年期障害などの治療やその効果も個人差が大きいことを念頭に置かなければなりません。