うつ病の治療薬として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、従来の三環系抗うつ薬(アミノトリプチンなど)に対して、効果は弱いものの副作用が少ないという触れ込みで大量に販売されています。
特に以前の抗うつ薬の消化管の副作用が出ないことが売りになっていました。しかし、今回選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)あるいは択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の服用で上部消化管出血が増えるという結果が英国でのケースコントロールスタディ(症例対照研究:過去の症例を検討)で明確となりました(Risk of upper gastrointestinal tract bleeding associated with selective serotonin reuptake inhibitors and venlafaxine therapy: interaction with nonsteroidal anti-inflammatory drugs and effect of acid-suppressing agents. Arch Gen Psychiatry 2008; 65: 795-803.)。
とくにSSRIと非ステロイド抗炎症薬NSAIDsを併用していれば、出血オッズ比が4.8と著明に高くなることが明示されました。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、吐き気、性機能障害、消化管出血が従来の抗うつ薬より多いことがすでに明らかになっています。これまでに行われた疫学研究(症例対照研究およびコホート研究)の多くで、SSRIと出血リスク上昇との関連が報告されています。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、従来の三環系抗うつ薬より安全であるという風説?はもはや信じられないことがこのような疫学的調査ではっきりしてきました。
この論文の著者は製薬会社から資金援助をもらっていたという「利益の相反」がありました。ということは、実際の臨床では覆い隠せなくなったSSRIの副作用を製薬会社が訴訟で負けないためにも公表する時が来たと判断したのでしょう。あくまでも企業の訴訟と儲けという天秤の金勘定の判断です。
いつも私が言うように、医薬品など特定多数の人間が服用するものは一企業に研究・販売をすべて委ねていいものかという根本的問題がここでも露呈されています。