根治的子宮切除は100年以上にわたって、早期子宮頸がんの標準的外科治療法です。しかし、この手法では腫瘍再発率が比較的高く、多くの子宮頸がん患者さんが自律神経系の損傷のため、術後の膀胱と腸の機能不全に悩まされていました。また、標準治療の一環として行われる術後放射線療法も不快な副作用を伴います。
早期の腫瘍成長がミュラー管部分(卵管、子宮、近・中位の腟と発生学的に定義される中胚葉組織)に限定されることから、早期の段階 でミュラー管部分を完全に切除すれば、手術合併症を減らしつつ局所における子宮がんの制御を改善できることが示唆されていました。
今回、早期子宮頸がんに対して、従来の方法より合併症を減らして病状を改善し、局所腫瘍再発リスクを低下させる新たな根治的子宮切除術(ミュラー管部分)がLancet Oncology(2009; 10: 683-692)に発表されました。
この切除術は子宮間膜全摘(total mesometrial resection;TMMR)と呼ばれ、従来の子宮全摘術の改良型で、解剖学に基づいてより正確にがんを切除するため、骨盤自律神経系の損傷を防ぎ、術痕を最小限に抑えられるということです。この術式では、頸管とともに腫瘍に隣接する骨盤組織を取り除くといいます。
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1999~2008年に ライプツィヒ大学を受診した患者のうち登録基準を満たした早期子宮頸がん患者212例を対象に、放射線療法を伴わないTMMRの有効性を検討した。同教授 らは、この試験で得られた患者の組織病理学的な腫瘍ステージ、切除断端、局所再発、手術合併症、5年後のアウトカムを報告している。
全体として無再発生存率は94%、5年生存率は96%で、治療関連疾患は少なかった。平均41か月の追跡期間中にがんが再発したのは10例にすぎ なかった。さらに、134例(63%)はリンパ節転移陽性や大きな腫瘍サイズなどの組織病理学的リスクが高かったにもかかわらず、全体の再発率は5%で あった。これは通常の根治的子宮切除術を行った患者の全体再発率に比べてきわめて低い。実際、リンパ節転移陽性患者の5年生存率は91%と、類似の患者で これまで報告されていた68?78%に比べて高かった。
重要なことに、132例(63%)は治療関連合併症がなく、74例(35%)でグレード1の合併症、20例(9%)のみでグレード2の合併症が発症した。グレード3ないし4の合併症は報告されていない。
同教授らは「過去の試験成績に比べ、術後照射なしのTMMRは生存率を15~20%改善しうる」と結論している。