卵巣癌は、早期発見が難しく、予後が不良な代表的な癌の一つです。あらゆる年齢で発症しますが、罹患年齢のピークが50~54歳と患者の年齢が比較的若く、患者数や死亡者数は増加傾向にあります。
卵巣癌は、有効な抗がん剤がほとんどありません。海外では、シスプラチン(商品名:ランダ、ブリプラチンほか)などの白金系抗悪性腫瘍薬が無効となった再発卵巣がんに対しては、ドキシルが標準的治療薬として位置付けられていました。
ドキシルは2008年10月現在、米国を含む約80カ国以上で発売されており、再発卵巣癌(ミューラー管を発生起源とした卵巣癌、腹膜癌を含む)に対する適応は、1999年に米国で初めて承認されて以降、約75カ国で承認されています。
そこで2009年4月22日、抗悪性腫瘍薬のドキソルビシン塩酸塩リポソーム製剤(商品名:ドキシル注20mg)に「がん化学療法後に増悪した卵巣癌」の適応が日本でようやく追加されました。ドキシルは、「エイズ関連カポジ肉腫」の適応で、2007年2月に発売されています。
ドキシルの有効成分であるドキソルビシン塩酸塩は、細胞の2本鎖DNAを架橋することによって、DNA合成とRNA合成を阻害し、さらにトポイソメラーゼII阻害作用により、DNA鎖を切断することで抗悪性腫瘍作用を発揮します。
副作用については、手足症候群、口内炎、骨髄抑制、肝機能障害など抗がん剤一般に起こるもので、注意が必要です。
このような海外で使用されている抗がん剤を承認するのは、きちんとしたエビデンスを認めた上なのでしょうか?それとも海外での副作用事例報告を待っているのでしょうか?
いずれにせよ、抗がん剤では卵巣がんは治癒しないことは現場の医師が一番よく知っているはずです。抗がん剤は医薬品の中でも有用性が疑わしい最たるものですので、新薬といって患者さんに期待を持たせるようなことだけはしないでほしいものです。