マンモグラフィ検診の導入後、検診世代の乳がん検出率は着実に増加している様ですが、最近、高齢者の発症率はほとんど、または全く減少していないと報告されています。
英国、カナダ、オーストラリアなどの5か国で、乳がんの集団検診プログラムにおける過剰診断リスクを検討し、必ずしも治療を必要としない無害ながんが行政による検診で全検出乳がんの3分の1を占めることがわかったと報告されました(BMJ(2009; 339: b2587)。
過剰診断とは、患者の存命中に症状の発現や死亡の原因とはならない無害ながんを検出することを指します。こうした乳がん細胞は増殖が遅く、患者さんは乳がんの症状が発現する前に別の原因で死亡します。
また、乳がん細胞が活動していなかったり、退縮している場合もあります。しかし、致死的な乳がんと無害な乳がんの鑑別は不可能なため、 検出された乳がんはすべて治療されます。これは過剰治療が避けられないことを意味し、患者さんにとっても、医療費の問題としても深刻なものです。
現在のマンモグラフィ検診の存亡に関わる論文でした。
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→今回の研究では、英国、カナダ(マニトバ州)、オーストラリア(ニューサウスウェールズ州)、スウェーデン、ノルウェーの5か国で行政検診の導入前後の乳がんの動向を解析し、過剰診断の程度の予測を試みた。
バイアスを最小限にとどめるために、各国における検診プログラムの開始前7年以上とプログラムの完全実施後7年以上の期間について、受検年代層と 非受検年代層の双方のデータを収集した。また、背景にある乳がんの変遷や、検診受検歴のある高齢女性に見られる乳がん発症率の代償的な低下など、解析結果 に影響を及ぼす他の因子についても調整した。
その結果、乳がん検出率は検診導入と密接に関連して上昇しており、検診受検歴のある高齢女性群における乳がん発症率の低下による調整後も、こうした上昇分はほとんど減少しなかった。
全体の過剰診断率は、前がん病変で一般的に侵襲性乳がんと同じ治療が行われる上皮内がんを含めた場合では52%、侵襲性乳がんに限定した場合で 35%であった。国別に上皮内がんを含めた過剰診断の程度を推算した結果、英国で57%、マニトバ州で59%、ニューサウスウェールズ州で53%、ス ウェーデンで46%、ノルウェーで52%となった。