アルバートアインシュタイン医科大学(AECOM,ブロンクス)疫学・集団保健学のMarc Gunter助教授らは,インスリン値が正常値を上回る閉経後女性では乳がんリスクが高まると発表しました(Journal of the National Cancer Institute(2009; 101: 48-60))。
インスリン値の上昇で,組織培養において乳房組織の成長を促進することは知られています。また肥満は閉経後乳がんの危険因子として実証されています。
インスリンとインスリン様成長因子(IGF)は、細胞の複製・成長に関わる重要な因子です。
インスリンまたはIGFもしくはその両方が,乳がんだけでなく、子宮体がんや結腸直腸がん,HIV,C型肝炎ウイルス,子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を含む特定のウイルスによる疾患の進行にも関与するのは、当然といえるでしょう。
それともうひとつは、慢性炎症が関係してくることです。インスリンが多くでると、それだけ脂肪組織が肥大します。肥大した脂肪組織からは炎症性物質が慢性的に分泌されることから、慢性炎症によって乳がんの発生・進行が加速されます。
インスリンのコントロールは乳がんの発生・進行を予防することにつながります。
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→Gunter助教授らは2004年,研究中に乳がんを発症した835例とWHI全体を代表する者としてランダムに抽出した816例から成る 1,600例超について検討。登録時の血液サンプルから,空腹時インスリン値,自然に産生されるエストラジオール(エストロゲンの一種)値,BMIを評価 した。
被験者を空腹時インスリン値に基づき4群に分けてエストロゲン値で調整した結果,インスリン値が最も高いグループは最低値のグループに比べて乳がんの発症率が50%近く高いことが判明した。
この結果のほとんどは,ホルモン補充療法(HRT)を受けていない大規模被験者群で観察された。HRTはインスリンなどのホルモン因子に強い作用を及ぼすので,この変数を除外すれば乳がんに対するインスリンの作用がさらに明らかになる。