乳がんの発症・再発には精神的ストレスを含めた、食習慣を中心とした環境因子が強く作用しています。閉経後に顔面紅潮(ほてり)のない女性では乳がん再発予防に食事療法が有効である可能性があるという論文(Journal of Clinical Oncology(2008; 3: 352-359))が発表されました。
エストロゲンが乳がんの増殖と関係しているというデータをあげましょう。
ほてりは更年期あるいは閉経後の女性で特有に認められます。顔面紅潮の症状が出ない女性ではエストロゲン値が高いことは既に知られています。また、ほてりのない早期乳がん歴のある患者では、ほてりのある患者さんと比べ乳がん再発率が高く、生存率が低いとの報告があります。
今回の論文では、「女性の健康的な生活と食事に関する研究(Women's Healthy Living and Eating study)」で、乳がん歴のある2,967例を対象に、食事療法群と、より管理の緩やかな食事摂取群(対照群)にランダム化割り付けしています。
食事療法群では、果物、野菜、食物繊維を豊富に含み、低脂肪の食事を摂取させました。
その結果、ほてりのない女性での比較では、がんの種類および抗エストロゲン療法で調整後も、食事療法群における乳がんの再発率は対照群に比べて31%低かったという結果がでました。また、ほてりのない女性に比べてほてりのある女性では有意に再発率が低かったという結果も出ています。
この結果から、乳がんのホルモン治療で使用されているタモキシフェンなどの抗エストロゲン製剤を使用しなくても食事療法でエストロゲンを低下させることができることが分かります。乳がんのようなガン疾患でも食事療法がいかに有効かを物語っています。