アルツハイマー病(AD)患者が感冒や消化器系感染症による急性全身性感染症に罹患した場合、記憶障害リスクが増大する可能性が示唆されたとNeurology(2009; 73: 768-774)に発表しました。
呼吸器や消化器などの感染症に罹患したり、転倒により頭出腫や挫傷を生じた場合、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子 (TNF)αの血中濃度が上昇しやすいこと、また感染症の既往がなくTNFαの血中濃度が低い場合に比べて高い場合には、記憶障害などの認知機能低下が起 こりやすくなることを示唆しています。
つまり、慢性炎症の指標であるTNFαの血中濃度が高いとアルツハイマー病(AD)に移行しやすいし、アルツハイマー病(AD)の場合は、その認知機能の低下に拍車がかかるということです。慢性炎症がアルツハイマー病の最大のリスクといえるでしょう。
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→AD患者222例(平均年齢83歳)を対象に、登録時とその後6か月間に3回、血液検査と認知機能検査を実施した。また、介護者と面談し、患者が感染症や炎症に結び付くような外傷を経験したか否かを調べた。
試験期間中に感染症や炎症に結び付く外傷を経験したのは110例で、これらの患者の記憶障害発生率は感染症や外傷歴のない患者と比べ2倍であった。
登録時にTNFαの血中濃度が高かった患者では慢性炎症の罹患が疑われる。しかし、これらの患者ではTNFα濃度が低値であった患者と比べて記憶障害の発生率が4倍であった。また、登録時のTNFαの血中濃度が高く、試験期間中にも急性感染症を経験した患者では、これらが認められなかった患者と比 べ記憶障害の発生率が10倍となった。
記憶障害の進行速度が速い患者は感染症に罹患したり外傷を受けやすいと推測できるが、登録時のデータからは認知症の重症度が高い患者で感染症や外傷歴が多いとのエビデンスは得られなかった。