運動による健康上のベネフィット(便益)の一部を誘発する筋肉細胞内の蛋白(たんぱく)が、マウスを用いた新しい研究で同定されたといいます(Natureオンライン版2012年1月11日)。
この蛋白は、ギリシャのメッセンジャーの女神、イーリスにちなみ“イリシン(irisin)”として知られ、化学伝達物質として作用します。今回の研究では、イリシンが、余分なカロリーを蓄えて肥満の原因となる皮下の白色脂肪の沈着に“強い影響”を及ぼすことが判明。肥満で糖尿病前症状態の運動をしないマウスにイリシンを注射すると、この蛋白は白色脂肪を、運動のみの場合よりもカロリーを燃焼させる“良い”褐色脂肪に変える遺伝子を活性化したといいます。
また、イリシンは高脂肪食を与えたマウスの耐糖能を改善し、10日間の投与後、マウスの血糖コントロールとインスリンレベルは改善し、糖尿病の発症が予防され、過剰な体重の減少に有用であったといいます。
運動によりイリシンレベルは上昇するようですが、イリシン自体は筋肉を作らないため運動に代わるものではありません。これは運動が糖尿病や肥満、癌などの慢性炎症疾患に効果的であることの傍証となっていることを示す研究となっています。