厚生労働省研究班が実施した大規模疫学研究(主任研究者=国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部部長・津金昌一郎氏)において,乳製品を多く摂取する男性の前立腺がんリスクはほとんど摂取しない男性に比べて1.6倍高いことが示されています(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2008; 17: 930-937)。
アイスランド国内で牛乳摂取量が異なる地域住民を対象に,若年期の牛乳摂取が前立腺がんの発生リスクと関連するか否かを調査した結果,思春期に牛乳を1日1回摂取していた男性では,摂取していなかった男性に比べて進行性前立腺がんのリスクが3.2倍高いことが,アイスラインドのコホート研究であるレイキャビック研究で明らかになりました(Epidemiol 2011年12月20日オンライン版)。
ただし、中年期以降に毎日摂取していた男性ではリスクとの関連はなかったといいます。これは乳製品に含まれるケミカルと乳製品そのものの発ガンリスクが明らかになったものと解釈できます。
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→レイキャビック研究において1907~35年に出生した男性一般住民8,894例(居住地域はアイスランドの首都レイキャビック,海岸にある村,農村,海岸にある村と農村の混合地域)を対象に,前立腺がん発症およびそれによる死亡を09年まで追跡した。
なお,サブグループとして2,268例には若年期,中年期,現在の牛乳摂取量を報告してもらった。
平均追跡期間24.3年の間に前立腺がんと診断されたのは1,123例であり,そのうち371例はステージ3以上または前立腺がんによる死亡が確認された。
20歳まで住んでいた地域と前立腺がんの関係を解析したところ,農村地域の男性では,都心の男性に比べて進行性前立腺がんの発症リスクが高い傾向にあったが,差は見られなかった〔オッズ比(OR)1.29,95%CI 0.97~1.73〕。
明らかなリスクの上昇が認められたのは,1920年代以前に生まれ20歳まで農村地域に住んでいた男性であった(同1.64,1.06~2.56)。
さらに,思春期(14~19歳)に1日1回以上牛乳を摂取していた男性は,摂取していなかった男性に比べて進行性前立腺がんのリスクが3.2倍高いことが分かった(同3.22,1.25~8.28)。
しかし,中年期(40~50歳)および最近牛乳を1日1回以上摂取していた男性では,摂取していなかった男性との間にリスク差はなかった(中年期:OR 1.31,95%CI 0.75~2.29,最近:同1.03,0.80~1.34)。