1日15分あるいは週に90分の運動で寿命を延ばせることを示唆するコホート研究が報告されました(Lancet. 2011 Oct 1;378(9798):1244-1253. Epub 2011 Aug 16.)。
今回の研究は、台湾の健診プログラムに参加した41万6,175人を対象とした前向きコホート研究であり、全対象者はベースラインの時点で健康状態や生活習慣についてのアンケートに回答しました。
ベースラインでの身体活動量によって以下の5群が設定されました。
この5群の設定は米国の2008年版身体活動ガイドラインに準じたものです〔なお、米国では中活動以上(7.5エクササイズ/週以上)が身体活動として推奨されており、わが国の身体活動ガイドラインの推奨である23エクササイズ/週以上とは異なっている〕。
観察期間は1996~2008年の13年間であり、その間の全死亡、すべてのがんによる死亡、心血管疾患による死亡、糖尿病による死亡が台湾の国立死亡記録などによりチェックされました。
ベースラインの時点で不活動群と判定された者が22万6,493人と全体の54%を占めており、低活動群9万663人、中活動群5万6,899人、高活動群2万1,730人、超高活動群2万390人と活動量が多くなるほど該当者は少なくなっていました。そして、観察期間中の死亡者は不活動群5,688人、低活動群1,877人(不活動群を1とした時の調整ハザード比0.86)、中活動群1,660人(同0.80)、高活動群742人(同0.71)、超高活動群813人(同0.65)であり、身体活動量に応じてすべての死亡リスクが減少することが明らかとなりました。
また、これらのデータを基に1日当たりの身体活動時間と死亡率の関係を検討すると運動所要時間に関する閾値は存在しないことが明らかになりました。
1日15分、あるいは週に90分の運動が全死亡あるいはすべてのがんによる死亡率を減少させ、個人の寿命を平均で3年延長させることになることが結論づけられました。今回の論文で、毎日、何分運動しなければならないといった条件課題ではなく、少しでも運動すれば健康に良い影響を与えるということで運動に対するこころの障壁がぐっと下がったのではないでしょうか。