幼児期に加工食品や脂肪、糖質の多い食事を摂取すると8歳半時点での知能指数(IQ)が低下する一方、野菜や果物、米、魚などが豊富な栄養バランスの取れた食事を摂取すると高くなる可能性があることが論文報告されました(Journal of Epidemiology and Community Health(2011; オンライン版)
今回の研究では、1991~92年生まれの児童約1万4,000例の健康状態を長期にわたって追跡しているAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)のデータが用いられました。
児童が3歳、4歳、7歳、8歳半の各時点で摂取していた食物の種類と摂取頻度に関するアンケートを保護者に実施。児童の食生活を、(1)高脂肪および高糖質の「加工食品過多型」(2)肉と野菜を中心とした「伝統的食生活」(3)果物、野菜、米、パスタを中心とした「健康的食生活」—の3パターンに分類し、児童ごとにスコアを算出しました。さらに、8.5歳時点のIQをウェクスラー児童知能検査(WISC)により評価しました。
その結果、性、登録時の年齢、母乳哺育の期間などの因子を考慮しても、3歳時点で加工食品過多型の食生活を送っていた場合、その後の食生活が改善されたか否かにかかわらず、8.5歳時でIQ低下と関連することが分かりました。
また、同パターンのスコアが1ポイント増加するごとにIQは1.67点有意に低下しました(95%信頼区間−2.34~−1.00、P<0.0001)。加工食品過多型の食事パターンのスコアが1ポイント上がるごとに、IQは1.67点下がりました。
一方、3歳時の健康的食生活は8.5歳時のIQ上昇と関連しており、同パターンのスコアが1ポイント増加するごとにIQは1.20点有意に上昇しました(同0.52~1.88、P<0.001)。なお、4~7歳時の食生活パターンは8歳半時のIQと関連していませんでした。つまり、3歳児までの食生活がIQに影響してくるという結果になりました。
脳は生後3年間に最も急激に成長することが分かっていますが、この時期に食べ物によって神経線維に関係する遺伝子のスイッチがオンになるものと推測します。私たちの体の器官の成長時期が環境因子に最も影響を受けやすい時期なのです。