バングラデシュ国民の350~770万人を含め、世界で数百万の人々が飲用水を介して慢性的にヒ素に曝露されています。長期にわたる飲用水を介したヒ素曝露が死亡率を増大させていることが報告されました(Lancet誌2010年7月24日号)。
ヒ素は猛毒ですが、汚染土壌地域では地下水に蓄積されます。その地下水は河川にも流れますが、そのような地域で井戸水や河川の水を飲用するともちろんヒ素中毒になります。
ヒ素は微量であっても体内に蓄積すると慢性的な障害を引き起こします。日本でも汚染された水を吸い上げた米にヒ素が微量含まれる場合があります。目に見えるわけではありませんので、本当に怖いですね。
やはり、土壌が健康でないと水が汚染されますので、私たちの健康は土壌からですよね。
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→今回、バングラデシュ国民を対象に、長期的および直近のヒ素曝露状況の変動と、全死亡や慢性疾患死との関連について評価するために、プロスペクティブなコホート研究を実施しました。
バングラデシュ・アライハザール(Araihazar)在住の地域住民1万1,746人(18~75歳)を抽出し、訓練を受けた医師が面接して臨床的な評価を行いました。参加者の登録は2000年10月~2002年5月に行い、2年に1回のフォローアップを実施した。
2009年2月までに得られたデータにつき、交絡因子を補正のうえCox比例ハザードモデルを用いてヒ素曝露量別の死亡率のハザード比(HR)を算出しました。
2000年10月~2009年2月の間に407人の死亡が確認された。多変量解析により、ベースライン時にヒ素含有量が10.0μg/L以下の井戸水を飲用している住民との比較において、含有量10.1~50.0μg/L、50.1~150.0μg/L、150.1~864.0μg/Lの井戸水を飲用している住民 の全死亡の補正HRを算出したところ、それぞれ1.34(95%信頼区間:0.99~1.82)、1.09(同:0.81~1.47)、1.68(同:1.26~2.23)であり、ヒ素曝露が死亡率を増大させていることが示唆されました。
同様に、毎日のヒ素曝露量や尿中総ヒ素濃度の解析でもヒ素曝露と死亡率の関連が示されました。一方、直近のヒ素曝露量の変動(2年毎に測定された尿中総ヒ素濃度の差)は死亡率にさほど影響を及ぼしませんでした。