慢性の睡眠不足の場合、仕事の能率の低下は簡単には回復せず、健康にも持続的な悪影響が表れるとの研究結果が発表されました(Science Translational Medicine(2010; 2: 14ra3))。
ふだんから睡眠不足が続き、時々長時間の睡眠で不足を取り戻そうとしている人は慢性的な睡眠不足の自覚がないのかもしれない。しかし、そのような 人が夜勤などで遅くまで起きていなければならない場合、仕事の能率の低下は想像以上に速く、ミスや事故を引き起こしやすくなるようです。
これまでの研究から、身体が必要とする休息を取らずに過ごしていると、疾患、ストレス、学習障害、記憶障害、交通事故のリスクが高まり、体重も増加することが明らかになっています。
今回の試験では、急性の睡眠不足、慢性睡眠不足、概日リズムの影響が重なると、仕事の成績にどのような影響が及ぶかを明らかにするプロトコルがデザインされました。
被験者は3週間、睡眠と覚醒を繰り返し、1日当たり5.6時間の睡眠を取りました。参加者の多くは、急性の睡眠不足なら10時間程度の長い睡眠 を1回取るだけで睡眠不足を解消できましたが、慢性的な睡眠不足を有する者では、覚醒時間が1時間長くなるごとに仕事のパフォーマンスが低下し、特に深夜の間にはミスや事故を起こしやすくなりました。
医師・看護士の医療事故や長距離トラックの交通事故などは人命を巻き込むものですので、慢性的な睡眠不足は注意してもらいたいものです。一般の私たちも無理をせずに睡眠はきちんととる習慣が大切だと痛感する研究でした。