閉経後女性のQOLの維持・ 改善を期待できる治療法として注目されていたホルモン補充療法(HT)はWomen's Health Initiative(WHI)報告により乳がんリスクが増えたと評価されました
ただし、WHI報告を再検証した結果、(1)投与期間に依存する(2)冠動脈疾患リスクは投与開始年齢に依存する(3)エストロゲンの作用は投与ルートにより異なる―ことなどが指摘されたことから、適切なHTの使用はメリットが高いと考えられる医師もいます。
弘前大学産科婦人科学教室の水沼英樹教授はそのひとりで、女性更年期障害の代表的な治療法であるHTおよび漢方薬療法について、同等に有効であり、HTはエストロゲン欠落症状として閉経後女性のQOL維持やヘルスケアに有用であると考えているようです。
更年期症状に対するHTの効果については、エストロゲンの欠如による火照りや発汗、動悸、冷え症、疲れなどに対しては効果が高い一方、いらいら感や憂うつ、不安感、不眠などには高くなく、エストロゲンの関与は部分的か、または関連がないことが考えられます。
そこで同教授らは、不定愁訴を持つ閉経後女性82例を対象に、漢方方剤の加味逍遥散投与群29例、HT群24例、併用群29例に分けて無作為オープン試験を行い、うつ性自己評価尺度(SDS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAS)、ピッツバーグ睡眠質問表(PSQI)を用いて評価しました。なお、年齢、閉経年齢、BMI、登録時のSelf Depression Scale(SDS)などに3群間で差はなかった。
その結果、3群ともにSDS、HAS、PSQIのいずれも治療後の改善が有意差を持って認められ、群間での差はなかった。また、漢方方剤投与により改善が優位な症状として、いらいら感やめまい、動悸といった精神・神経症状、HTにより改善が優位な症状として顔面紅潮(ホットフラッシュ)や発汗など のエストロゲン欠落症状がわかったといいます。
更年期障害には漢方と西洋医学の組み合わせが良いという結果でしたが、薬物療法だけで改善するものではないでしょう。