女性のホルモン補充療法(HRT)は、脳の萎縮と関連するが、脳血管疾患の最初の徴候である脳内の小病変とは関連しないとする2件の研究結果がNeurology に発表されました。
これまでの研究で、エストロゲンの単独療法またはプロゲステロンとの併用療法で、65歳以上の女性に認知症や認知機能低下あるいは思考と記憶が困難となるリスクが上昇することが示されてきました。
1件目の研究(2009; 72: 135-142)で米国立加齢研究所(NIA)のSusan Resnick博士らは、これらのホルモンが記憶と思考にどのように作用するかを調べられました。臨床試験は、ホルモン補充療法(HRT)が健康リスクを増大させ、心疾患を予防しないことが判明したため、当初の予定より早期に中止されました。
同博士らは、WHIMS終了から1~4年経過した女性1,403人(71?89歳)にMRI検査を施行し、脳画像を分析しました。その結果、エストロゲン単独群またはエストロゲン+プロゲステロン群では、プラセボ群と比べて前頭葉容積が2.37cm3、海馬容積が0.10cm3小さく、脳の2領域で容積の減少が認められた。これらの影響は、HRTを受ける以前から若干の記憶障害があった女性で最も顕著に見られました。このことは、エストロゲンが既に神経変性疾患過程が始まっている女性の思考力に悪影響を及ぼす可能性を示唆しています。
もう1件の研究(2009; 72: 125-134)では、HRTが脳内の小血管病変量の増加とは無関係であるという予想外の結果がウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州ウィンストン セーラム)保健科学のLaura H. Coker博士らの研究から得られました。同博士らによると、HRTの認知力に対する阻害作用は血管疾患よりも神経変性と強く関連している可能性がある。このことは、Resnick博士らの研究知見で裏づけられています。