ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)のMaryFran R. Sowers博士らによる研究で、閉経後女性に対するホルモン療法(HT)について新たな疑問が提示されました(Archives of Internal Medicine(2008; 168: 2146-2153))。エストロゲン製剤を使用している人は炎症反応が高まっており、酸化ストレス(慢性炎症、ガン、老化を推進)が増大していることが報告されました。
タイミング仮説は、更年期障害そしてそれに伴う自律神経失調症状に対して閉経後6年以内のホルモン療法(HT)開始を推奨しています。しかし、血栓、炎症、酸化ストレスの上昇などが健康な中年女性でエストロゲン製剤を服用した人にも起こっています。
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→47~57歳の女性を対象とした縦断的研究で、5年間のフォローアップ期間後の 性ステロイドと心血管プロフィールを比較した。被験者は、(1)閉経前群(2)結合型エストロゲン(CEE)単独群(3)CEEとプロゲスチン併用群 (4)閉経後5年未満群(HTなし)の4群に分けられた。分析対象となった女性は764例で、(1)閉経前群98例(2)CEE単独群53例、(3)CEE+プロゲスチン併用群243例(4)閉経後群370例であった。
この結果、閉経前群または閉経後群に比べ、2つのHT群では性ホルモン結合グロブリン(SHBG)レベルが50%高かった(P<0.001)。 SHBGには、性ステロイドの受容体への結合を制限する作用があるため、エストロン代謝物レベルも60%強高かった(P<0.001)。
HT群では閉経前群に比べて酸化ストレスの指標となるF2a-イソプロスタンのレベルが高かった。また、閉経前群または閉経後群に比べてHDLコレステロール(HDL-C)/LDLコレステロール(LDL-C)比が良好であった(P<0.01)が、トリグリセライド値は高かった(P<0.01)。
HT群では閉経前群や閉経後群よりも良好なプロフィールを示した脂質もあったが、閉経後6年以内でHT療法を開始した動脈硬化のない女性でも有害作用が見られた。
今回の研究では、CEEの問題点として、エストロン代謝物とSHBGのレベルが上昇すること、酸化ストレスが増加傾向になること、血栓形成、炎症などが挙げられた。これらの副作用は、心疾患のない中年女性でも発現していた。