一般的に季節性インフルエンザにおける感染しても症状が出ない不顕性感染の割合は、症状が出た人の1.5倍といわれています。仮に軽症者を 不顕性感染と考えれば、新型インフルエンザでも症状が出た人の1.2倍以上が不顕性感染していることを大阪府立公衆衛生研究所が発表しました(2009年12月11日)。
公衆衛生研究所は、5月に新型インフルエンザの集団発生が確認された関西大倉中学・高等学校の生徒550人、教職員95人、生徒の家族2人の合計647人を対象に血清疫学研究を実施。8月下旬、647人全員から採血し、新型インフルエンザに対する中和抗体を測定しました。
647人のうち、採血時までにPCR法で新型インフルエンザの感染が確定していたのは21人。対象者の中和抗体価は、160倍以上が18人、112倍が1 人、56倍が2人で、そのほとんどが160倍以上だった。このことから、中和抗体価が160倍以上の人は、新型インフルエンザに感染している可能性が極めて高いと考えられました。
一方、全647人のうち、中和抗体価が160倍以上だったのは102人、10倍以上160倍未満は211人、10 倍未満は334人でした。そこで公衆衛生研究所では、160倍以上だった102人のうち、採血前(5~8月)までの症状が確認できた98人を症状別に分類しまた。
その結果、38℃以上の発熱と、咳嗽または咽頭痛のインフルエンザ様症状が認められた人は44人(44.9%)、38℃以上の発 熱、咳嗽、咽頭痛、鼻汁のいずれかがあるもののインフルエンザ様症状の定義を満たさなかった人は36人(36.7%)、無症状だった人は18人 (18.4%)いました。
以上の結果から、中和抗体価が160倍以上だったにもかかわらず、少なくとも採血時までに無症状だった18人は、不顕性感染の可能性が高いと示唆されました。また、インフルエンザ様症状の定義を満たさない軽症者も含めれば、54人(55.1%)が不顕性感染だったとも考えられます。
19世紀にベルナールとパスツールの論争がありましたが、ベルナールの主張するとおり、病気を引き起こすのはウイルスなどの外的要因よりも人間の内的要因であることが奇しくもインフルエンザウイルスでも裏付けられた結果となっています。多くの健康人は、インフルエンザに感染しても発症すらしないことがお分かりになったと思います(毎年、新たなウイルス製造を指示している財閥の方々にとっては不確定な要因となりますね)。