疾患別最新医学ニュース(医薬品の副作用)3

医薬品の副作用(薬物有害反応)による反復入院リスクが高い高齢者

癌や腎疾患、合併症のある糖尿病などを持つ高齢者は、医薬品の副作用(薬物有害反応(ADR))で反復入院するリスクが高く、脳血管障害、認知症などの高齢患者は、薬物有害反応(ADR)の反復入院のリスクが低いという結果が報告されています(BMJ誌2009年1月17日号)。

先進国では、入院の3~6%が医薬品の副作用(薬物有害反応(ADR))に起因しています。初回薬物有害反応(ADR)より、その後に発生した薬物有害反応(ADR)の方が入院率は高く、入院期間も長いことを明らかにされていました。

癌、リウマチ性疾患などの慢性病は医薬品の副作用による治療入院を要することが多いという結果は日本でも同じではないかと考えます。そもそも癌、リウマチ性疾患に使用する医薬品の副作用は脳血管障害、認知症で使用する医薬品より重大です。脳血管障害で注意を要する医薬品は心原性塞栓症に用いるワーファリンによる出血くらいでしょう。ワーファリンの過量投与による脳内出血、脊髄硬膜下血腫、消化管出血などはよく経験します。

リウマチ、膠原病で使用する免疫抑制剤や各種癌疾患で使用する抗がん剤は、いずれも生体の一番大切な免疫系にダメージを与えますので、「諸刃の剣」なのです。

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→後ろ向きコホート研究を行い、60歳以上の高齢者の薬物有害反応(ADR)による反復入院と、年齢、その他の人口統計学的要因、薬剤の種類、併存疾患との関係を調べた。

分析対象にしたのは、西オーストラリア州(2007年の人口は209万人)の公立病院と市立病院すべての入院記録。同州のデータ連係システムを用いて、 1980~2000年に薬物有害反応(ADR)により初回入院した60歳以上の患者2万8548人を選出、退院後3年間の再入院の有無を調べた。

薬物有害反応(ADR)の定義は、「医薬品を用いた介入に起因する、明らかに有害または不快な反応で、その後の投与は危険と予想され、投与する場合には有害な反応の予防または治療が必要、または用量の変更か使用の中止が必要となる」とした。

3年間に5056人(17.7%)が薬物有害反応(ADR)により再入院していた。

多変量Cox比例バザード回帰モデルを用いて、個々の要因とADRによる反復入院の関係を調べた。

ベースラインの患者特性のうち、反復入院との間に有意な関係が見られたのは、性別(女性に比べ男性の調整ハザード比1.08〔95%信頼区間1.02-1.15〕)、初回入院からの時間が短い(初回入院が80~84年の患者と比べた調整ハザード比は、85~89年が1.44〔1.21-1.72〕、90~94年が1.52〔1.29-1.79〕、95~99年が2.34〔2.00-2.73〕)、初回の入院期間が長い(14日未満に比べ14日以上の患者のハザード比は1.11〔1.05-1.18〕)、Charlsonの併存疾患尺度(スコア0に比べスコア1~2は1.30〔1.22-1.38〕、スコア3~4は1.42〔1.29-1.57〕、スコア5~6は2.04〔1.72-2.42〕、7以上は1.71〔1.46-1.99〕で、傾向性のp<0.001)など。

予想に反して、年齢の上昇は有意な影響を及ぼしていなかった。

併存疾患と薬物有害反応(ADR)による反復入院の関係は以下の通り。併存疾患なしに比べ、うっ血性心不全が併存している場合のハザード比は1.56(1.43-1.71)、末梢血管疾患の併存は1.27(1.09-1.48)、慢性肺疾患の併存は1.61(1.45-1.79)、リウマチ性疾患の併存は1.65(1.41-1.92)、軽症肝疾患は1.48(1.05-2.07)、中等症から重症の肝疾患は1.85(1.18-2.92)、中等症の糖尿病は1.18(1.07-1.30)、慢性の合併症のある糖尿病は1.91(1.65-2.22)、腎疾患は1.93(1.71-2.17)、リンパ腫と白血病を含む悪性疾患は1.87(1.68-2.09)、転移性固形癌は2.25(1.92-2.64)。

反対に、以下の慢性疾患の存在は、薬物有害反応(ADR)による反復入院のリスクを低減していた。脳血管疾患のハザード比は0.85(0.73-0.98)、認知症は0.62(0.49-0.78)、片麻痺または対麻痺は0.73(0.59-0.89)。著者らは、これらの疾患の患者には密度の高い管理が行われているからではないか、と考えている。

なお、心筋梗塞、消化性潰瘍、エイズと、薬物有害反応(ADR)による反復入院の間には有意な関係は見られなかった。

自宅で薬剤を使用するような慢性疾患の患者において、薬物有害反応(ADR)による反復入院を回避するためには、地域の医療サービスが薬物有害反応(ADR)監視を積極的に行う必要があるだろう、と著者らは述べている。

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