私たちヒトでは30歳を過ぎると10年ごとに約5%の割合で筋肉が減少し、60歳を超えると減少率が加速します。80歳には約40%の筋線維が減少します。老化によって上肢より下肢の筋肉が目減りします。
老化によって筋肉が著しく目減りした状態をサーコピ-ニア(加齢性筋肉減少症)といいます。
このサーコピ-ニア(加齢性筋肉減少症)は、瞬発力の筋肉である速筋が主に目減りしていきます。寝たきりなどの廃用性の筋肉の目減りは、持続力の遅筋が主に目減りしていきます。
筋衛星細胞という普段は休止している細胞があります。この細胞は、筋肉が損傷したときなどに筋肉を再生するスペア細胞です。老化によってこのスペア細胞が働かないようになっているようです。
インスリン様成長因子(IGF-1)はスペア細胞を活性化させる働きがあります。運動によってインスリン様成長因子(IGF-1)が増加することから、加齢による筋肉低下(筋肉のアンチエイジング)には運動が理にかなっています。また慢性炎症は、サイトカインIL-6がインスリン様成長因子(IGF-1)の産生を阻害しますので、慢性炎症がある場合は筋肉量が低下します。
またアンチエイジングの定番といえるカロリー制限が筋肉のアンチエイジングに効果があることがサルの実験などで分かっています。
カロリー制限により霊長類でも加齢が関係する疾患の発症が遅れ(アンチエイジング)、寿命が延びることが確認されたと発表されました(Science 7月10日号)。 これは人間でもカロリー制限がアンチエイジングに効果があることを示したものです。
今回の論文では、大人に達したアカゲザル(飼育下の平均寿命27歳)を30%カロリー制限群と非制限群に分けて飼育、疾 患や死亡への影響を検討したものです。その結果、20年経過した今回の報告時点の生存率はカロリー非制限群の50%に対し、制限群では80%と高かった。また、カロリー制限は加齢関連疾患の発症を遅らせ、特に糖尿病、がん、心血管疾患、脳萎縮の発症を減らしました。
実験の開始は1989年にまでさかのぼります。この年、30匹の成人サルを使って研究は始まった。その後、1994年に46匹のサルが追加されています。研究では、半分のサルに低カロリーの食事を、残り半分のサルに普通の食事を与えられました。研究者らはすべてのサルを注意深く観察し、定期的に身体組成を測定したり、血液検査や内分泌機能の検査を行なったり、心臓や脳の機能を測定したりした。また、サルが死ぬと、解剖検査を行なって死因を特定した。
現在生き残っているサルは全員が27才以上で、アカゲザルにとっては老齢期にあたります。カロリーが制限された食事をとっているサルは、癌、糖尿病、心 臓病、および脳萎縮に見舞われたり、除脂肪筋肉が減少したりするレベルが驚くほど低下しました。加齢に関わる原因で死亡したサルの数は、カロリー制限がないサ ルでは38匹のうち14匹にのぼったが、カロリー制限があるサルでは38匹のうちわずか5匹だったといいます。